2011年7月26日火曜日

♯002 い <岩井俊二/いわいしゅんじ>



初めて触れた映画監督/岩井俊二の作品は「リリイ・シュシュのすべて」だった。
4年前、友人に勧められ、自宅で夜更かしをツマミに見たのだが、見終わった後にズシンと残るものがあった。「得た」というより「削られた」感覚。今でも覚えてる。

ホラーでもないのに背筋は寒く、朝になるのさえ怖くなるほど心臓がバクバクとなりやまない。岩井監督が「遺作を選ぶとしたらコレ」と挙げた血肉の一作。

この映画に「見透かされ」虜にされた自分は、岩井映画の「乾いた情熱」みたいな青臭さをむき出す魅力に心を奪われてたくさんの作品を見た。
「打ち上げ花火下から見るか、横から見るか?」「undo」「花とアリス」
Picnic」「四月物語」「虹の女神」そして渋谷のシネセゾン(?)見た「スワロウテイル」どれもが好きな映画の1つに挙げられる。
生々しさを感じるハンディでのカメラワークに、時には場違いなライティング(リリィシュシュ/少年達が田んぼのあぜ道を自転車で走る所)など、当時、映像の学校に通っていた自分の物差しでは測れない大変な刺激となった。
かの岡本太郎は「人生は積み重ねていくものでなく、そぎ落としていくものだ」という言葉を残したが岩井作品にはどこか通じるものがあるように感じる。
自分には無い物を与えてくれるような映画ではなく、自分にあるイヤな所を刺激してくるような感じ。足し算でなく引き算の映画。
先日、岩井監督の「トラッシュ・バスケット・シアター」という「スワロウテイル」を撮っていた時のエッセイを入手し、読んでみたが余りにも好きな映画の話がマニアックすぎて吹いた。邦画史上初パソコン(Avidと呼ばれる編集ソフト)で映画を編集した人ということを知り驚いた。
今となっては当たり前になったそのシステムをいち早く導入しているのだからやはり「見透かす目」はある方なのだろう。
現在、仙台出身である監督は初期作品である映画「打ち上げ花火下から見るか、横から見るか?」を無料公開されている。
冒頭はやはり「昔のTVだな」という印象を受けるのだろうが後半のプールのシーンはぜひ見て頂きたい。奇麗だという言葉を使うのが汚く見えるほどの映像美に圧倒される。
仙台出身の岩井監督が311を受け、花火大会の中止など夏を失ってしまった人たちへのエールを込め無料配信を決めたという。
引き算だけじゃない、時には映画はかけ算にだってなる。

出た答えが+じゃ無かったとして別に不正解ということなどないのだ。ないのであーる。

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